AWS Global Acceleratorによるクラウドパフォーマンスの向上

による投稿 2018年11月28日
2018年12月8日

11月26日(月)からラスベガスで開催されたアマゾン主催イベント「Re:Invent 2018」では、衛星通信からのデータを利用する事業者向けのサテライト・アズ・ア・サービス(AWS Ground Station)から、新しいセキュリティカンファレンス「re:Inforce」の告知まで、数多くの発表が行われました。しかし、この中でも特に、AWSプライベートバックボーン経由で、より高速なアクセスを可能にするサービス(AWS Global Accelerator)の発表が際立っていました。

この発表により、AWSはバックボーンを収益化している他のクラウドプロバイダの仲間入りを果たし、この動きはさまざまなプロバイダ間の差別化を特徴づける非常に興味深い傾向となっています。 そしてこのAWSの発表は、ThousandEyesがAWS/Azure/GCPへのネットワークアクセスパフォーマンスを測定・比較・公開した、初めてのベンチマークレポート(英語)を発表してからわずか3週間後の事でした。このレポートでは、AWSのパフォーマンスに関する特徴やエリア毎の変化を見ることができ、AWS Global Acceleratorのようなソリューションが必要であったことの証明とも言えるでしょう。では、ここからさらに掘り下げていきましょう。

インターネット – パブリッククラウドのパフォーマンス決戦

AWS、Azure、GCPの3大パブリッククラウドのネットワークパフォーマンスと接続アーキテクチャを比較したThousandEyesによる調査では、同一地点からそれぞれのクラウドにアクセスした際のパフォーマンスの違いにとても興味深い結果が出ました。 ベンチマークレポートで明らかになった重要な点の1つは、特にアジア地域にてAWSが最もパフォーマンスの高低差が大きい結果となりました。 下記の図1に示すように、AWSのネットワーク遅延の標準偏差値が最大となりました。

図1:アジアにおける双方向通信の遅延の変化により、AWSはネットワークパフォーマンスの変化が最も大きく、それによってパフォーマンスの予測可能性が最も低い結果に。
図1:アジアにおける双方向通信の遅延の変化により、AWSはネットワークパフォーマンスの変化が最も大きく、それによってパフォーマンスの予測可能性が最も低い結果に。

さらに調査を進めると、最も急速に成長している市場の1つと言われるアジア地域にて、なぜそのような結果が出るのか最初の手がかりが見つかりました。ネットワーク経路の分析により、AWSへのアクセスはインターネットへの依存度が高いため、パフォーマンスの変化や運用リスクが大きくなっていたことが明らかになりました。

AWSのネットワーク設計では、ユーザーのトラフィックはパブリックのインターネット上をより長い時間経由し、最終ターゲットのリージョンに最も近い場所からAWSバックボーンに接続されます。この手法は一般的に「ホットポテトルルーティング」と呼ばれます。AWSは、各リージョンに関連付けられたパブリックのルートをグローバルのエッジロケーションからエニーキャスティングしないため、トラフィックが常にインターネットを経由して各リージョンまでたどりつくことになります。

これは、サービスがAWS us-east-1(AWSの有名なAshburnデータセンター)でホストされている場合、ユーザーの所在地に関係なく(図2参照)、Ashburnに近いAWSのバックボーンまでインターネット上を経由します。つまりAWS向けのトラフィックは、AWSが運用する輻輳の少ない高品質のバックボーンよりも、ベストエフォート型のネットワークであるパブリックインターネット上をより長く経由することになるのです。この動作は、Microsoft Azureがトラフィックを処理する方法と比較すると、明らかに異なるわけですが、それについてはまた別の機会にお話しましょう。もしこのテストの詳細にご興味を持たれた方は、2018年パブリッククラウドパフォーマンスベンチマークレポートを是非ご覧ください。

図2:Global Acceleratorを使用しない場合のAWSへの接続アーキテクチャ
図2:Global Acceleratorを使用しない場合のAWSへの接続アーキテクチャ

AWSが Global Accelerator サービスを提供する理由

AWS Global Acceleratorは、まさに前章の課題を解決するソリューションとなります。 インスタンスがホスティングされているリージョンまでのトラフィックをインターネットに任せるのではなく、アクセスする側のエンドユーザーに最も近いAWSバックボーンにトラフィックをプッシュし、そこからAWSネットワークを経由してホスティングされているリージョンまで辿りつくことができるのです。 では、これが企業にとって何を意味するのでしょうか? まず、1)パブリックのインターネットよりも信頼性の高いネットワークを経由するため、パフォーマンスが向上します。2)この有料オプションにより、AWSは収益をあげることができます。

クラウド時代のトレンド- クラウドプロバイダバックボーンの収益化

実際、AWS Global Acceleratorのサービス開始は、驚きのニュースではありませんでした。自身が投資した内部インフラから収益を上げるベストな方法であり、自然な流れと言えるでしょう。ユーザーは、より良いパフォーマンスを求めるならばお金を払い、コスト削減を優先するならばある程度のユーザーエクスペリエンスを犠牲にする必要があるのです。AWSは今回の発表により、Network Service Tiersという非常に似通ったサービスを既に提供しているGoogle Cloudの仲間入りを果たしました。またAWSは最近、海底ケーブルへの投資のニュースで取り上げられましたが、常時内部インフラの増設を続けてきたAWSが、そのインフラ自体から収益を上げるサービスモデルに導入至ったのは、何ら衝撃的なものではなく自然な流れと言えるでしょう。 Azureは、バックボーンの収益化で盛り上がるプロバイダパーティーにまだ参加してはいませんが、もしかすると時間の問題かもしれません。

しかし、ここでの一番大事なポイントは、お客様のビジネスクリティカルなトラフィックが、インターネットあるいはクラウドプロバイダーのネットワークのどちらに乗っていようとも、そこがお客様自身が直接管理できる世界ではないということです。

これらの背景により、多くのSaaS企業やGlobal 2000企業がThousandEyesの可視化により、既存の枠を超えたアプリのサービスレベルやネットワークの監視を行っています。 ThousandEyesの更なる詳細については、ThousandEyes Webページやその他のブログ記事をご覧ください。